説明: 中京大学 校章

 

日時:20101212

場所:愛知大学

発表者:中京大学 1回生 武藤祐季

 

 

 

 

 

 

 

会計基準の歴史

 

目次

序論

第1章  過去

1.   国際会計基準委員(IASC)の設立

2.   比較可能性改善プロジェクト

3.   IASC2000基準書とコア・スタンダード

第2章  現状

1.   IASCから国際会計基準審議会(IASB)への改組

2.   IASCからの引き継ぎとIFRSの策定

3.   アドプションとコンバージェンス

第3章  未来

1.   上場企業の問題点

2.   中小企業の問題点

結論

 


序論

 2009630日、「我が国における国際会計基準の取り扱いについて(中間報告)」が金融庁企業会計審議会から公表され日本における国際財務報告基準(IFRS)に関する今後の取り扱いが明らかにされた。中間報告のポイントは、20103月期から連結財務諸表への任意適用が認められたことと2012年に強制適用の是非を判断するということだ。

 現在、主要国の中で米国と日本はコンバージェンスを目指しつつアドプションも視野に入れ活動しているがIFRS適用に至っていない。国際的にIFRS導入への動きが高まる中、なぜ導入に至っていないのか。

本論では、IFRSが策定された経緯やIASCIASBの歴史を説明しIFRS導入前・導入後の問題点について考察していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1章  過去

1.  国際会計基準委員(IASC)の設立

 IFRSInternational Financial Reporting Standards)策定の歴史は1973629日のIASCInternational Accounting Standards Committee)発足まで遡る。IASCはロンドンを拠点としオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、アメリカ各国の公認会計士協会のメンバーの合意によって設立され、IFRSの一部にも含まれる国際会計基準(IAS)の作成にあたっていた組織だ。当時の財務報告書のルールは国や会社によってバラバラな状態でそのすべてが認められていた。そんな中、IASCは将来のグローバルな経済時代の到来を見据え、世界共通の会計基準(IAS)を作成していた。しかし設立当初、IASCは世界の各国にIASの適用を促すほどの影響力はなくほとんど存在感を発揮できていなかった。

 そして、IASCが注目されるターニングポイントとなったのが1987年だ。この年に国際的な機関である、証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions : IOSCO)が80年代の国際資本市場の拡大・多国間公募の増加を受けIASに着目しIASCの諮問委員会に参加。そして「財務諸表の比較可能性」プロジェクトが始まった。

 

2.   比較可能性改善プロジェクト

 比較可能性改善プロジェクトが必要とされたのは、IASが主要国の会計基準がベースに開発が進められていたので比較する際に主要国間で差異のある基準について代替的な処理を認めていたため企業間の財務諸表の比較が困難であるという問題があったためだ。

 そのような代替的な処理をできるだけなくそうとするのが比較可能性改善プロジェクトや後述するIASC2000基準書、コア・スタンダードでありIASの品質向上へとつながっていった。198811月にはIOSCOIASCの比較可能性向上プロジェクトを積極的に支援する方針をとった。そして199311月に比較可能性向上プロジェクトは完了した。

 

3.   IASC2000基準書とコア・スタンダード

 比較可能性向上プロジェクトが完了した後も、さらなる改善へ向けてIASCIOSCOとの合意のもと国際会計基準の中核となるコア・スタンダードという基準についての議論を続ける。コア・スタンダードとは、各国の会計基準との国際的な調和が図られた国際会計基準基盤である。19938月にIOSCOIASCに対してコア・スタンダードについて満足のいく対応をとればIASを正式に承認する意図があることを通知した。そしてIOSCOが示した40の会計基準からなるコア・スタンダードをめぐるIASCのプロジェクトは、IAS30のコア・スタンダードを完成させ20003月に終了し同年5月にIOSCOIASを正式に承認し各国にIASを使用することを認めるように勧告した。

 

第2章  現状

1.   IASCから国際会計基準審議会(IASB)への改組

 IOSCOIASを正式に承認したことにより今まで法的な強制力のなかったIASが法的強制力を持つようになったのでIASCは活動をより強化するために20006月にIASBInternational Accounting Standards Board)へ改組することが決定された。

 そして20014月にIASBが発足した。IFRSの改訂・開発、プロジェクトの策定・実行などの全面的な裁量権も有している。IASBはこれまでのIASCとは異なり、各国の会計基準設定主体との連携がとれるのでIASIFRSがグローバルスタンダードになる道が開けた。

 IASBの発足した2000年から活発になった会計基準を主導したのが欧州連合(EU)であった。EU2005年以降に開始する事業年度から、連結財務諸表をIFRSに基づけることを義務づけるとした。このことがIFRSが世界的な影響力を持つ契機になった。

 

2.   IASCからの引き継ぎとIFRSの策定

 IASBに改組されてIASCがつくったIASIFRSではどのように引き継がれているのか。IASIASC時代に41号までつくられ、その後各項目について廃止や改訂が繰り返され現在では29項目がIASBに引き継がれている。IASBになって新たに設定された基準は9項目ありこれらを合わせてIFRSと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


                                                       

 

 

 

 

 


                                                                                                   ※20106月時点

 IFRS策定のためにはいくつかのデュープロセスにしたがって決まっていく。そのプロセスは次の4つだ。

@   基準の策定、改定のための検討項目を決定し、プロジェクト計画を公表。

A   新基準、改訂について、討議資料や公開草案を公表し意見聴取を行う。

B   各方面からの意見を検討の上、基準を最終確定。意見聴取でよせられた意見の検討内容を公開する「フィードバック・ステートメント」を併せて公表。

C   新基準、改定基準の適用開始2年間、適用後レビューを実施・

 ポイントは、議論の内容が公開され、広く意見を取り入れるなど透明度の高い手続きが行われていることだ。

 

3.   アドプションとコンバージェンス

 IFRSの採用方法には2つの方法があり、1つがコンバージェンスもう1つがアドプションである。コンバージェンスは自国の会計基準をIFRSに収斂させることで重要な差異がなくなるように自国の会計基準を修正することだ。コンバージェンスは自国の商習慣や特別な事情を加味できるので負担が軽減できるが、IFRS自体常に変化しているので差異をなくす作業を続けなくてはならない。

 アドプションは、IFRSそのものをまるのみしてそのまま自国の会計基準として適用することだ。アドプションのメリットとしては、世界の企業と時間差なく同じ基準を適用できるということとグローバルなオペレーションが向上することである。デメリットは変更業務の負担が大きいことや英語で作成されるため英語で理解しなければならないこと、透明性、公平性が今後保たれるかどうかということだ。

 日本はいつIFRSに対応するのだろうか。日本はいままでIFRSにコンバージェンスで対応してきた。20078月に東京合意を締結し企業会計基準委員会(ASBJ)とIASBの間でコンバージェンスの加速化に合意した。東京合意は10116月までに重用な差異を解消することを取り決めたものだ。

 序論でも述べたように中間報告で20103月期からIFRSの任意適用を認めたが、やはりまだIFRSを適用していない日本と米国が今までつくってきた自国独自の会計基準を捨てIFRSをまるのみにしてしまうことはできないであろう。IFRSと日本の会計基準の間には原則主義と細則主義という根本的な違いがあることや収益認識の違いなどがあり突然変わってしまうと混乱が起こってしまう。そのため、どちらの会計基準がいいかを決めることができないのであろう。

 

 

 

 

 

第3章  未来

1.   上場企業の問題点

 日本では20103月期からIFRSの任意適用が認められている。対象はIFRSによる財務報告について適切な体制を整備し、国際的な財務・事業活動を行っている上場企業の連結財務諸表である。しかし、国内のみで事業を展開している企業はどうなるのか。金融庁の中間報告では、基本的に連結決算を行っているすべての上場企業を強制適用の対象とする方針だ。

 上場企業の中には、連結対象の会社を保有していなくて単体での財務諸表しかつくっていない企業もあるがそうした企業はIFRS適用の対象となっていない。これからはそういった企業の適用や連結財務諸表のみなのか単体も適用するのかと言ったことが問題になってきそうだ。

 

2.   中小企業の問題点

 中小企業の中でも上場企業の連結子会社はIFRSの導入が必要になってくる。しかしその他の中小企業、非上場企業に対しては今のところIFRS適用への動きはない。金融庁の中間報告でも、中堅・中小企業に対するIFRSの適用について「ニーズは低いと考えられ、IFRSに基づく財務諸表作成のための体制整備や準備の負担を考えると、非上場企業へのIFRS適用は慎重にすべき」としている。

 しかし近い将来上場を計画している企業ではIFRSを導入した方が資金調達などで有利になる可能性もある。そのためIASBIFRSを簡素化した「中小企業向けIFRS」作成した。これからさらに中小企業の会計基準のあり方が課題になるのではないだろうか。

 

結論

 世界が会計基準の統一、IFRSの導入に向かっているという流れにはもう逆らうことはできないだろう。しかし、その流れに飲み込まれてしまうのではなくしっかりと自国の方針を決め柔軟に対応していかなければならない。日本の上場企業への強制適用が計画されている2015年まであと少ししかなくIFRS導入への準備が必要になってくる。もっとIFRSのことを理解している人を増やしていかなければいけない。IFRS導入をいかに負担を少なくして行うかが重要であると思う。


参考文献

 

橋本尚監修 「よくわかるIFRS」(ナツメ社,2010

 

金融庁

「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」の公表について

http://www.fsa.go.jp/news/20/20090616-1.html

 

証券監督者国際機構(IOSCO):金融庁

http://www.fsa.go.jp/inter/ios/iosco_03.html

 

中小企業庁 事業環境部

http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100215a08j.pdf

 

IASB Homepage

http://archive.iasb.org.uk/index.asp

 

 

歴史|基礎知識|IFRS/国際財務報告基準(国際会計基準)|トーマツ

http://www.tohmatsu.com/view/ja_JP/jp/knowledge/ifrs/basic/history/index.htm

 

IFRS 国際会計基準フォーラム

http://www.atmarkit.co.jp/im/fa/serial/ifrs_basic/01/01.html

 

IFRS」の動向と現在位置をつかむ EnterpriseZine (EZ)

http://enterprisezine.jp/article/detail/2136?p=3            (2010/11/22)