資産の評価基準について

原価基準・時価基準・現在価値基準・公正価値基準の4つがある。順に細述する。

原価基準は、資産を取得時の支出額(本体価額の他、取得に係る付随費用を含む)で評価するもので、取得原価主義に基づくものである。また、取得原価主義は、過去の支出額(およびその記録)に資産評価の基礎を求めることから、歴史的原価主義とも呼ばれる。原価基準は、現代においては、固定資産・棚卸資産等の事業投資によって取得された費用性資産で広く用いられている。

原価基準のメリットとして、利害関係調整機能との親和性・宠観性や確実性の確保の二点が挙げられる。

利害関係の調整を行う見地からは、投下資本の回収余剰の意味における分配可能利益を算定することに重きが置かれている。原価主義では、資産を取得原価で評価し、収益の計上に伴って当該原価を費用化し、投下資本の回収余剰額を利益として算定する為、利害関係調整機能との親和性が強いと言える。

また、原価基準は、領収証等の証憑に裏打ちされた過去の支出額をもとに資産評価を行い、見積要素を含まないことから、検証可能性・宠観性・確実性が確保される。

こうした、原価主義のメリットに対して、デメリットも指摘されている。

第一に、利益計算の観点からは、資産取得時から取得価額が費用化される時点までの時の経過により、貨幣価値や資産の価格水準が変動することにより、収益・費用の対応が損なわれることがデメリットとしてあげられる。

加えて第二に、情報提供機能の観点からは、貸借対照表価額に時価から乖離した取得原価が用いられることにより、財政状態の適正な表示が損なわれること、時の経過に伴う価格水準の変動が無視され(評価されず)、保有利得(評価損益)と操業利益が区別されないことから、詳細な利益情報が提供されないことがデメリットとされる。

時価基準は、資産を貸借対照表日における時価で評価するものである。時価基準は、現代においては、売買目的の有価証券や、投資不動産など、金融投資で取得された資産で広く用いられている。

ここに言う時価には、入口価格Input Value)と出口価格Output Value)の二種類が存在する。入口価格は、再調達原価、取替原価とも呼ばれ、当該資産を購入市場で再調達する場合に要する価格である。これに対し出口価格は、正味売却価格、売却時価とも呼ばれ、当該資産を販売市場で売却した場合に回収される価格である。

時価主義のメリットとしては、貸借対照表における財政状態表示に資し、意思決定有用性を高め、もって情報提供機能の強化に資すること、時価評価を通じて貸借対照表日における貨幣価値や価格水準に準じた資産評価が行われることで、実体資本の維持が確実となることが挙げられる。

これに対し時価基準のデメリットとしては、未実現の評価損益が利益に混入し、分配可能利益の算定に向かないこと、資産によっては、活発な市場が整備されていないこと等の事由により、時価測定が困難となる場合があることが挙げられる。

現在価値基準は、割引価値基準とも呼ばれ、資産から生じる将来キャッシュインフローを現在価値に割り引いた金額で資産を評価するものである。時価基準を広義にとらえる場合には、現在価値を時価の一種と考え、現在価値基準を時価基準に含めて整理する場合もある。

現在価値基準における割引計算で用いられる代表的な利子率には、実効利子率と市場利子率がある。

実効利子率は、取得原価等により評価された帳簿価格と将来キャッシュフローの金額から求められた利子率である。満期保有目的債券や、貸倒懸念債権に対する貸倒引当金に評価に用いられる。

また、市場利子率は債券市場から入手される利子率で、大別すると、投資リスクが反映された利子率とリスクフリーな利子率がある。投資リスクが反映された市場利子率を用いる例としてはリース資産の当初測定や年金資産の評価が、リスクフリーな市場利子率を用いる例としては退職給付債務PBO)の評価が挙げられる。

公正価値基準とは、公正な価値で資産を評価するものである。現代においては、ここに言う公正な価値を、出口価格であると解することが、囻際的に見て一般的である。公正価値測定に関する会計基準では、出口価格が測定できない場合の代替測定として、類似品の出口価格による方法、現在割引価値に拠る方法が定められている。